職場に、50代の新人が配属されてきた。
新しい環境で一から学ぼうとしているその姿に、自分は少しだけ胸を打たれた。年齢を重ねてからの転職は、決して楽なものではないはずだから。
だが、その人が来てまだ一週間も経たないうちに、周囲の空気が濁り始めた。
「あの人、覚え悪くない?」「え、またミスしてるよ」「年だけ取ってて使えないんじゃないの?」
…もう、聞くに耐えない。
同僚たちの口からは、悪意のこもった批判や悪口ばかりがこぼれていた。上司さえも、それをたしなめるどころか、軽く同調するような態度を取っている。
思わず思った。
「なんてろくでもない人間の集まりなんだ」
人はなぜ、誰かを下に見ることで安心しようとするのか。
なぜ、「慣れていない人を支える」という発想よりも、「叩いて優越感に浸る」方を選ぶのか。
少なくとも自分は、こうはなりたくないと思った。
人間関係のギスギスしたこの場所に、自分もどっぷり浸かってしまったら、きっと心の何かが壊れてしまう。
彼を見ていると、昔の自分を思い出す。
新しい職場で緊張しながらも懸命にやろうとしていた、あの頃の自分を。
だから、自分だけは、彼を悪く言わない。
むしろ、少しでもこの世界に味方がいると思ってくれたら、それでいい。
この世界は、やさしくない。
でも、やさしくなれる人間は、まだどこかにいると信じたい。



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